保険やる前に検討を!倒産防止共済ざっくり解説

税金の話
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江戸川区葛西のギタリスト税理士 中村剛士です。

昨日の『節税対策としての保険の功罪』で
他にやることあるだろ!と書きましたので、
今日はその一つ『経営セーフティ共済』についてまとめておきたいと思います。

以前は『倒産防止共済』という名称でしたので、
こちらの方が通りが良いかもしれませんね。

私も、お客様に説明するときは『倒産防止共済』と言っていますw

倒産防止共済やると、何がメリットなの?

倒産防止共済とは、小規模企業共済と同じく、
国の機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している共済制度です。

小規模企業共済は『個人事業主に退職金を!』という理念でしたが、
倒産防止共済については『連鎖倒産を防止せよ!』という理念に基づいています。

取引業者が倒産した際に、中小企業者が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で、
無担保、無保証人で掛金の10倍(上限8,000万円)まで借り入れる事ができます。

中小企業やスタートアップ期のベンチャー企業などは、
資金繰りの悪化で簡単に倒産してしまいますので、
それを防ぎ、会社を存続させようというモノです。

メリットとしては、次の通りです。

□ 無担保、無保証人で借り入れ可能

□ 借り入れまでのスピードが早い

□ 掛金は全額経費になる

□ 解約手当金が受け取れる

無担保、無保証人で借り入れ可能

取引先が倒産してしまった際に、連鎖倒産に陥ってしまわないように、
『回収できなくなった金額』と『納付掛金の10倍』のいずれか少ない金額まで、
無担保、無保証人で貸してくれます。

例えば、200万円納付済みであれば、2,000万円まで借り入れできます。
回収できなくなった金額が1,000万円であれば、1,000万円までとなります。

借り入れまでのスピードが早い

取引先が倒産してしまった際に、そことの取引が確認できれば
すぐに借り入れすることが可能です。

慌てて銀行に行っても時間がかかるどころか、貸してくれないでしょうから、
それに比べれば段違いです。

掛金は全額経費になる

小規模企業共済と同じで、掛金は全額経費になります。
月額5,000円~最大200,000円まで、5,000円単位で自由に設定できます。
小規模企業共済と違って800万円までしか納付できないという縛りがありますが。

最大で年間240万円経費になりますので、結構な節税効果があります。

法人であれば33.5%なので804,000円
個人で20%の方は480,000円
23%の方は552,000円の節税です。

税率の一番高いところが削れますので、所得が高ければ高いほど効果も高いです。

また、この掛金は戻ってきますので、
『外部に積み立て貯金したら、税金も安くなる』というイメージです。

小規模企業共済の説明と全く同じですw

解約手当金が受け取れる

元本割れしないためには、小規模企業共済は20年(240ヶ月)必要でしたが、
倒産防止共済は40ヶ月です。

12ヶ月未満だとボッシュートされてしまうので、そこだけ注意が必要ですが
3年半で100%返ってきますので、大分早いですね。

とはいえ、何かデメリットあるでしょ?

あります。小規模企業共済より厳しいです。

□ 無利子だけど無利子じゃない

□ 借り入れ可能な倒産でないと借り入れできない

□ 解約手当金は課税される

一つずつ見ていきましょう。

無利子だけど無利子じゃない

やまだかつてないwinkみたいになっていますが(年代がバレますねw)
中小機構のHPに下記の通り記載があります。

共済金の借入れは無利子です。
ただし、借入れ後は、共済金の借入額の10分の1に相当する額が
払い込んだ掛金から控除されます。

どうでしょう?

言っている意味がよく分かりませんね。

金額入れてみましょう。

800万円納付していたとして、その10倍の8,000万円を借りた場合は
借入額の10分の1である800万円が納付額から控除されます。

つまり、8,000万円借りたら800万円なくなると。

・・・利息10%じゃねぇか!って事ですね。

ちなみに、8,000万円借りた場合には7年間で返済することになるのですが、
元利均等返済で行くと、年利2.75%だと800万円程度の利息になります。

正直な話、銀行から借り入れ起こした方が良いですね。
今だったら1%程度で借りられますから。

とはいえ『事前に借り入れできるのであれば』という話ですので、
連鎖倒産の憂き目に遭うよりは、高利でも借りるべきでしょうが。

借り入れ可能な倒産でないと借り入れできない

これも中小機構のHPを確認して欲しいのですが、
取引先の倒産は『ちゃんとした倒産』でないと借り入れできません。

夜逃げはNGです。

悪用を懸念しているのでしょうが、
夜逃げも結構だと思うのですが・・・

解約手当金は課税される

昨日の『節税対策としての保険の功罪』でご紹介した
戻ってくるタイプの保険と同じです。

掛金納付時は経費になりますので、戻ってきたら利益になります。

保険は半分経費で半分利益でしたが、
倒産防止共済は全額経費で全額利益です。

昨日も書きましたが、
現在、中小企業の実効税率(法人税、住民税、事業税の合計負担割合)は以下の通りです。

利益が400万円以下・・・21.4%

400万円~800万円以下・・・23.2%

800万円~・・・33.5%

見ての通り、400万円、800万円、それ以上の3つに分かれています。

最大800万円が利益になりますので、
保険以上に節税時は21.4%、戻ってきたときは33.5%みたいな事が起こります。

インパクトがデカくなりますので、より慎重な出口戦略が必要です。

何で保険より前に検討すべきなの?

確かに、戻ってくるタイプの保険とほぼ同じ効果となりますが、

□ 掛金の金額を自由に設定できること

□ 全額経費であること

□ 解約のタイミングが完璧にこっちでコントロールできること

という理由により、保険よりも前に検討すべきなのです。

掛金を自由に設定できる

上でも書きましたが、倒産防止共済の掛金は、
5,000円~200,000円の間で自由に設定できます(5,000円刻み)。

この掛金ですが、届出をすれば何度でも変更できます。

保険の場合は、一度決めたら変更できません。
正確には、とある方法で変更できますが美味しくありません。

全額経費である

保険の場合は半分経費だったので、
キャッシュアウトの割には節税効果がそうでもない感じだったのですが、
倒産防止共済は全額経費ですので、
キャッシュアウトと節税効果が見合ったものになります。

その分、戻ってきたときには大変なのですが。

解約のタイミングがこっちでコントロールできる

保険の場合は、ピークの返戻率が何年後に来るかが決まっています。
その何年後に解約しないとどんどん返戻率が下がっていき、最終的には0になってしまいます。

対して倒産防止共済は、
40ヶ月たったら自動で戻ってくるモノではありませんし、
放っておいても0になったりしません。

ということで、解約のタイミングは完璧にこっちでコントロールできるのです。

編集後記

ということで『倒産防止共済ざっくり解説』でした。

如何でしょうか?
『保険と似た効果が有りながら、こっちでコントロールできる』
というのが、私がオススメしているポイントです。

ただし『課税の後送り』なんだということは
改めて強調しておきます。

何らかの出口戦略がないと、結果税金上がってるじゃん!
みたいな目に遭いますので、注意が必要です。

ちゃんと顧問税理士と相談してください。

聞きにくい場合は、私が相談に乗りますw