江戸川区葛西のギタリスト税理士 中村剛士です。
昨日のブログを読んだらしい友人の税理士から、
「大丈夫なの?」と聞かれました。
そいつは『無理です派』だったようです。
やはり税理士でも意見が分かれるんだということを再認識しました。
そこで今日は、私がスーツは経費で問題ないと判断している理由の一つでもある
『特定支出控除』をざっくりまとめておきます。
特定支出控除って知ってる?
皆さん特定支出控除って知ってますか?
「サラリーマンでも経費が引ける」という制度で、
昔からあったのですが、平成24年の税制改正でその対象が拡大され、
使いやすくなったと話題になったんですが、記憶にありますか?
詳細は国税庁HP<給与所得者の特定支出控除>でご確認いただくとして、
ざっくり言うと、
『要件あるけど、給与所得控除にプラスで、実際にかかった経費を引いても良い』
という制度です。
何度かブログに出てきていますが、
給与所得には『給与所得控除』というモノがあります。
これは、国がサラリーマンに『概算経費』を認めているモノで、
例えば額面500万円の場合は154万円が給与所得控除となり、
500万円-154万円=346万円に対して所得税がかかるようになっています。
『特定支出控除』が適用できれば、
346万円からさらに特定支出控除額を引くことができます。
特定支出控除の要件とは?
何か美味しそうな話ですよね。
でも、実際は要件が結構厳しいです。
『下記の特定支出が、その年中の給与所得控除額×1/2を超えていれば、
その超えた部分の金額を控除することができる』となっています。
上記の例でいくと、154万円×1/2=77万円が基準となりますので、
特定支出が77万円以下の場合は使えません。
また、77万円を超えている場合、例えば100万円かかった場合は、
100万円-77万円=23万円だけが特定支出控除の対象となります。
この場合は確定申告をすることで、
500万円-154万円-23万円=323万円が課税対象となります。
税率の一番高いところが削れますので、
税額としても結構なインパクトがありますね。
しかし、要件は結構厳しいと言いました。
特定支出が限定列挙だからです。
下記で見ていきましょう。
特定支出とは?
特定支出とは、サラリーマンが支出する下記の経費で一定のモノをいいます。
1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
3 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
4 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
※ 平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの
資格取得費も特定支出の対象となります。
5 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために
通常必要な支出(帰宅旅費)
6 次に掲げる支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして
給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
※ 6の支出は合計65万円まで
※ 6の支出については、平成25年分以後、特定支出の対象となります。
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において
着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、
仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他
これらに類する行為のための支出(交際費等)
以上、国税庁HPより抜粋ですが、どうですか?
額面500万円の方、これで77万円超えそうですか?
結構厳しいと思います。
何故かというと、こんな感じじゃないですか?
1.通勤費→通常会社負担のため0円
2.転居費→同上
3.研修費→同上
4.資格取得費→自己負担
5.帰宅費用→通常会社負担のため0円
6.(1)図書費→同上
(2)被服費→自己負担
(3)交際費→自己負担
例えば1番とか、
通勤手当を支給してくれないところなんてあるの?ってレベルですよね。
ドヤ顔で「特定支出です!」って言われてもw
新幹線通勤で会社の上限超えちゃってる人くらいなモノでしょう。
ということで、実際には4.資格取得費と6.(2)被服費(3)交際費だけが
特定支出控除の対象となるということですね。
これだけで年間77万円って相当ですよ。
私の古巣で税理士試験の勉強をすると、大体1科目20万円程度です。
残り57万円を服と飲み会でって厳しくないですか?
しかも、これ全部会社の証明書が必要なんです。
あぁ・・・そうですか・・・
じゃあ、いいです・・・
というのが、私の感想ですw
編集後記
ということで『特定支出控除っていうのがあるけど、使えないんだよね』でした。
平成24年の改正時は『サラリーマンのスーツが経費に!』
という触れ込みだったので期待していたのですが、
フタを開けてみると、ガッカリな内容でした。
まぁ、改正前は『給与所得控除額を超えること』でしたので、
×1/2になったことだけは素晴らしいと思います。
改正前は全国で年に2~3件くらいだったそうです。
今何件あるかは知りませんがw
最後に、私がスーツは経費で問題ないと判断している理由ですが、
平成24年の税制改正で6.(2)被服費が出来たからです。
サラリーマンがスーツを経費にできるなら、
個人事業主が出来ないわけがないと思っています。
昨日も言いましたが、高すぎるヤツはNGですけどね。